恒ちゃんが、旦那さんのことを「主人」と言った。
少しだけ、違和感があった。
いまどきなら、せいぜい「夫」。
強い人なら「パートナー」なんて言うのかもしれない。
でも恒ちゃんは、
「人に話すときは、主人って言うことにしてるんです」
と言った。
そういうものなのか、と思った。
みんながみんな、ジェンダーだとか男女同権だとか、
そういうことを考えているわけではないらしい。
目立つ人が、目立っているだけなのかもしれない。
恒ちゃんは、スナック菓子を箸でつまんで食べるような子だ。
僕はその横で、気楽なバイトをしている。
彼女よりずっと年上で、
下手をすると、父親よりも年上かもしれない。
おばさんみたいなおじさんの僕は彼女が、
「主人が」と言ったその一言に、
どこか安心してしまった。
今月入籍したばかりの新卒の女の子が、
「主人が」と言う。
その言い方が、妙に頼もしくて、
ああ、この子はちゃんとしているな、と感じてしまった。
僕の思考は、古臭いのかね。