二月半ば、秋田の温泉へ出かけた。
前日の夜、小雨のなか小走りで家路を急いでいた。
段差に蹴つまずき、体が一瞬ふわりと浮く。
下はコンクリート。
とっさに右腕で胸をかばったが、見事に転んだ。
前を走っていた相方は、
「あっ」というわたしの声に振り向いたらしい。
その姿は漫画のようだったそうだ。
寝返りを打つのは難儀だったが、まあ大丈夫だろうと、翌日は予定通り旅立った。
二泊三日から帰ってきて、立っていても座っていても胸が痛むようになった。
翌日、近くの整形外科へ。
診断は肋骨骨折。
胸郭バンドと痛み止めを渡され、全治六週間。
夜勤のホテル仕事には支障ないと、バンドを巻いて出社した。
「肋骨骨折してますからね」と、
それとなく同情を乞うが、
松葉杖もなければ腕を吊っているわけでもない。
なかなか同情してもらえない。
通勤ラッシュと無縁の時間帯なのが救いだが、席を譲られることもない。
挙げ句の果てには、バイトの女子に、
「くしゃみしたんですか?」
ときた。
さすがナース志望。容赦ない。
肋骨は折れても、外見からはわからない。
同情もされない。
骨折り損である。